て、荒涼とした四辺の風物を見せていた。埋葬が終ると李夫は皆にすこしずつの銭をやった。
「おれは、跡をきれいにしてけえるから、おめえだちはさきへけえっとれ」
 棺舁の姿が見えなくなると、李夫は脚下《あしもと》に置いてあった鋤《すき》を把って、今かけたばかりの棺の上の土を除けはじめた。李夫は棺の中へ入れてある首飾などに眼をつけているところであった。李夫の頭にはそれが三百金の価のあるものとなっていた。
 土を除くと、鋤の頭で棺の一方をとんとんと叩いた。すると葢《ふた》は苦もなく開いた。李夫は葢をする時に、既に釘をそこここはぶいてあったのであった。
 李夫は片膝をついて蹲《しゃが》みながら中へ手を入れ、秀英の頭の方と思われるところを探った。首飾らしいものがそこにあった。李夫は喜んでそれを引きだして月の光に透して見た。確かにそれは金と銀とでこしらえた首飾であった。夫人の入れたものはその他にもまだたくさんあった。李夫はまた手を入れて探った。その手に死人の顔らしいものが触れた。李夫はぞっとして手を引いたが、そのひょうしに肱が棺の縁に当ったので、その手はまたしたたか死人の顔に当った。と、怪しいうなるよ
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