つ覆さるやうになつてて、風の吹く晩などには、その樫の葉の具合で電燈の光が変に見えるから、夜遅く其所を通る時には気になつて何時も見ると云ふんです。ところで二三日前の晩にやはり僕達と遅くまでバーを歩いてて赤電車に乗つて帰つて其所を通りながら、その電燈が気になるのでそれを見い見い歩いて行つてその下へ行つたところで、電燈の笠が針金の網の中でちやうど地球儀がまはるやうにくるくるとまはつたさうです。山本は吃驚して立ち止つて見るともう別に動いてゐるやうでもない、眼のせいだらうそれとも何時ものやうに風の具合で木の葉が動くためにあんなに見えたんだらうと思つて、木の葉に注意して見たが木の葉はぢつと静まつててすこしも動いてゐない。では怖い怖いと思つてゐるからそれでまはつたやうに見えたらうと思つて、電燈から眼を引かうとするとまたくるくると地球儀をまはすやうにまはりだしたんで、山本は吃驚して下宿へ走つて帰つてもうそんな所を夜二度と通るのは厭だと云て、その日から森川町にゐる友人の下宿へ移つたと云ふ話がもとになつていろいろと神秘的な話に入つてそれから夜の旅行と云ふことになつたんです。
 まだ九時頃でした。神戸の方へ
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