蘇生
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)王鼎《おうてい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一度|細君《さいくん》を迎えた
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秦郵という処に王鼎《おうてい》という若い男があったが、至って慷慨家で家を外に四方に客遊《かくゆう》していた。その王鼎は十八の年に一度|細君《さいくん》を迎えたことがあったが、間もなく病気で亡くなった。弟思いの兄の鼎が心配して、ほかから後妻を迎えようとしたが、本人が旅ばかりして家にいないので、話が纏まらない。兄は困って暫く家にいてくれと言って忠告したが、王鼎は耳に入れずにまた船に乗って鎮江の方へ往った。
鎮江には王鼎の友達の一人がいたが、往った日はちょうど他《よそ》へ往って留守であったから、まず其処の旅館へあがった。それは窓の前に澄みきった江の水があって、金山の雄麗な姿が絵のように見える室《へや》であった。王はその旅館の眺望が非常に気に入った。
翌日になって、他出していた友達が帰ってきて旅館へ顔を出した。
「留守をして失敬した、さあ、これから僕の処へ往って貰おう」
王はもすこしその旅館にいた
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