織成
蒲松齢
田中貢太郎訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)洞庭湖《どうていこ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その時|崔《さい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)者[#「者」は底本では「音」]
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洞庭湖《どうていこ》の中には時とすると水神があらわれて、舟を借りて遊ぶことがあった。それは空船《あきぶね》でもあると纜《ともづな》がみるみるうちにひとりでに解けて、飄然《ひょうぜん》として遊びにゆくのであった。その時には空中に音楽の音が聞えた。船頭達は舟の片隅にうずくまって、目をつむって聴くだけで、決して仰向《あおむ》いて見るようなことをしなかった。そして、舟をゆくままに任《まか》しておくと、いつの間にか遊びが畢《おわ》って、舟は元の処に帰って船がかりをするのであった。
柳《りゅう》という秀才があって試験に落第しての帰途、舟で洞庭湖まで来たが酒に酔ったのでそのまま舟の上に寝ていた。と、笙《ふえ》の音が聞えて来た。船頭は水神があらわれたと思ったので、柳を揺り起そうとしたが起きなかった。船頭はしかたなし
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