あつかいをなさるものだから、両親の言いつけで他へ往くことにして、袁家の結納を受けたのですけど、私どう思っても往かれないのです、それに往く日が今晩でしょう、お父様は結納をかえす顔がないのですから、私が自分で持って往って返してきたのです。ちょうど門を出ようとする時、お父様が走って送ってきて、馬鹿、わしの言うことを聴かないと、後に薛家からひどい目にあわされるぞ、たとい死んでも、帰ってきてはならないぞとおっしゃったのです」
崑は十娘の義に感心して涙を流した。家の人は皆喜んで、奔《はし》って往って両親に知らした。母親はそれを聞くと朝になるのも待たずに、奔《はし》って児の室へ往って、十娘の手を執って泣いた。
それから崑生もまたおとなしくなって、悪いいたずらをしなかった。そこで二人の情交はますます篤くなった。十娘は言った。
「私はせんに、あなたが軽薄で、のちのちまで添いとげられないと思ったのですから、自分のたねをこの世に残すまいと思ってましたが、今ではもう、心配することもありませんから、私は児を生みます」
間もなく蛙神夫婦が朱の袍《うわぎ》を着てその家に姿を見せた。翌日になって十娘は産蓐《さん
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