ふ》み殺して、大事にしてやらなかった。十娘はすなおであったが、ただよく怒った。彼はどうしても崑のすることに善い感じを持つことができなかった。そして、崑も十娘であるがためにこらえなかった。十娘がさからうことでもあると崑は怒って言った。
「おまえの家の爺さんや媼《ばあ》さんが、どうして人間に禍をくだすことができるものかい、男が何のために蛙なんかこわがるのだ」
十娘はひどく蛙ということをきらっていた。それを聞くとひどく怒って言った。
「私が来てから、あなたの家は、田の粟のとりめが多くなり、売りねも高くなって、今、児も年よりも、皆が温かに着て、お腹一ぱいにたべていられるじゃないの、※[#「号+鳥」、第3水準1−94−57]《ふくろう》に翼《はね》が生えて、母鳥《おやどり》の睛《ひとみ》をつッつくのとおんなじようなことをしようというのですか」
崑はそれを聞くとますます怒って、
「俺はけがらわしいものの増すのが厭なのだ、そんなものが子孫に貽《のこ》せるものかい、どうか早く出て往ってくれ」
と言ってとうとう十娘を逐《お》いだしてしまった。崑の両親がこれを聞いた時には、十娘はもう往ってしまった後
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