あまりして児に家内を持たしたが、それは任侍郎[#「侍」は底本では「時」]の孫女であった。それは任侍郎の妾が女の児を生んだところで、数ヶ月にして亡くなったが、後になって三娘が祝に捉えられて伴れもどされたということを聞いたので、祝の家へ往って祝夫婦と親類づきあいをするという約束をしていた。とうとう任の家では孫女を祝の児の嫁にして、それから往来するようになったのであった。
一日《あるひ》、祝は児夫婦を傍へ呼んだ。
「上帝が、わしが人世に功があると言われて、わしを四|涜牧龍君《とくぼくりゅうくん》にしてくれたので、これから出かける」
児が何か言おうとしていると、庭のさきに四頭の馬をつけた黄※[#「膽」の「月」に代えて「巾」、247−15]車《こうせんしゃ》が来たが、その馬の股には皆|鱗《うろこ》があった。祝夫婦はそれを見ると盛装して乗った。児夫婦は泣きながらお辞儀をしたがその瞬間に見えなくなってしまった。その日寇家へは三娘が来て別れを告げた。両親は泣いて引き留めようとした。
「祝さんがもう出かけたのですから」
そして、門を出たかと思うと、もう見えなくなった。祝の児の名は鶚《がく》、字《あざな》は離塵《りじん》というのであったが、その鶚は寇家に請うて、三娘の遺骸をもらい受け、それと祝の遺骸を同時にして埋めたのであった。
底本:「中国の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
1987(昭和62)年8月4日初版発行
底本の親本:「支那怪談全集」桃源社
1970(昭和45)年発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:Hiroshi_O
校正:noriko saito
2004年9月25日作成
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