。それは五十ばかりの女であった。小三郎は不思議に思って声をかけるとそのまま消えてしまった。
その怪しい女の姿は翌朝また地爐《いろり》の傍に見えた。その時小三郎はまだ眠っていたので小三郎の父の家から付けてある重左衛門《じゅうざえもん》と云う小男《げなん》が見つけた。小三郎は起きてその話を聞いて縁の下を検《しら》べたが、黒猫が一ついたばかりで別に不思議もなかった。しかし、怪異が気になるので大般若経《だいはんにゃきょう》などを読んでもらったりしているうちに、これも病気になって歿くなったので秋山家も断絶した。そして、秋山と田宮の建物がとりこわしになったので、左門殿町の妖怪邸《ばけものやしき》と云って好事者《ものずき》が群集した。
底本:「怪奇・伝奇時代小説選集13 四谷怪談 他8編」志村有弘編、春陽文庫、春陽堂書店
2000(平成12)年10月20日第1刷発行
入力:Hiroshi_O
校正:門田裕志
2003年7月24日作成
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