れて卵塔場の中へ持って往った。
その夜お滝は非常に穏かで怪しい挙動《そぶり》もせずに寝た。新三郎も老婆も祈祷のお陰であると思って悦んだ。そして、朝になって皆《みんな》より早く起きた老婆が庖厨《かって》口の戸を開けてみると、簷下《のきした》に一|疋《ぴき》の獣が死んでいた。老婆の声を聞きつけて新三郎も起きて来た。獣は狐であった。その狐の尻尾の附け根には生々しい傷痕があった。其処へ新一がにこにことして起きて来た。
お滝の体は十日ばかりすると元の体になった。新一が狐を殺したことは非常な評判になって、それがため新一は駿河台にあった大きな旗下《はたもと》邸の小供のお伽に抱えられたのであった。
底本:「日本の怪談」河出文庫、河出書房新社
1985(昭和60)年12月4日初版発行
底本の親本:「日本怪談全集」桃源社
1970(昭和45)年初版発行
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、底本のままとしました。(青空文庫)
入力:大野晋
校正:松永正敏
2001年2月23日公開
2001年2月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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