なされました」
権兵衛は体をくねらすなり俯向《うつむ》きになった。
「五体が痺《しび》れた」
「痺れた、御病気でございますか」
「病気かも知れんがおかしいぞ」
「何か食物《たべもの》の啖《く》いあわせではございますまいか」
「其の方たちと同じ物を啖ったじゃないか、他には何も啖わん、啖いあわせなら其の方だちも同じようになるはずじゃが」
「そりゃそうでございます。それでは、とにかく、気つけをあげましょう」
「そうじゃ、拙者の印籠に気つけがある、取ってくれ」
「よろしゅうございます」
伴れの下僚《したやく》も傍へ来て心配そうに権兵衛を見ていた。総之丞はそれに眼をつけた。
「水を汲んで来てもらいたいが」
下僚の一人は彼《か》の老人の家へ往った。総之丞は権兵衛の腰につけた印籠を取って、其の中から薬を出したところへ彼の下僚が茶碗に水を容《い》れて引返して来た。総之丞は其の水を取って薬とともに権兵衛の口へやった。
「さあ、どうぞ」
権兵衛は口をもぐもぐさして飲んだ。
「御苦労、御苦労」
「御気分は如何でございます」
「気分は何ともない、筋のぐあいであろう」
「それでは、馬にお乗りになりますか
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