海神に祈る
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一木権兵衛《いちきごんべえ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)七人|御崎《みさき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「金+至」、第4水準2−90−75]《かま》の

 [#…]:返り点
 (例)遂[#二]
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       一

 普請奉行の一木権兵衛《いちきごんべえ》は、一人の下僚《したやく》を伴《つ》れて普請場を見まわっていた。それは室津港《むろつこう》の開鑿《かいさく》工事場であった。海岸線が欠けた※[#「金+至」、第4水準2−90−75]《かま》の形をした土佐の東南端、俗にお鼻の名で呼ばれている室戸岬《むろとみさき》から半里の西の室戸に、古い港があって、寛文《かんぶん》年間、土佐の経世家として知られている野中兼山《のなかけんざん》が開修したが、港が小さくて漁船以外に出入することができないので、藩では延宝《えんぽう》五年になって、其の東隣の室津へ新しく港を開
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