過を話して、金を見せて慶びあった。老婆はその金で王成にいいつけて三百|畝《ほ》の良田を買わせ、屋《いえ》を建て道具を作らしたので、居然たる世家《きゅうか》となった。老婆は朝早く起きて王成に農業の監督をさし、細君に機織《はたおり》の監督をさした。そして二人がすこしでも懶《なま》けると叱りつけたが、夫婦は老婆の指揮に安んじていて怨みごとはいわなかった。三年過ぎてから家はますます富んだ。その時になって老婆が帰るといいだした。夫婦は涙を流して引き留めた。それで老婆も留まったが翌日見るともういなかった。



底本:「聊斎志異」明徳出版社
   1997(平成9)年4月30日初版発行
底本の親本:「支那文学大観 第十二巻(聊斎志異)」支那文学大観刊行会
   1926(大正15)年3月発行
入力:門田裕志
校正:松永正敏
2007年8月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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