「お前は、何故、いつまでもそうしておる」
「私は、私の貞烈のために、無錫《ぶしゃく》の宋《そう》という家へ、男の子となって生れることになっておりますが、あなたに情縁が重うございますから、一度あなたにお眼にかかるまで、生れ出る月を延ばしております、が、もうお眼にかかりましたから、明日は往って生れます、もしあなたがこれまでの情誼をお忘れにならなければ、一度宋家へ往って、私を御覧になってくださいまし、笑ってその験《しるし》をお眼にかけます」
趙と愛卿の霊は、手を取りあって寝室へ往って歓会したが、楽しみは生前とすこしも変らなかった。
鶏の声が聞えた。
「私は、帰らなくてはなりません、これでお別れいたします」
愛卿の霊は泣きながら榻《ねだい》をおりた。趙も後から送って出た。
愛卿の霊は階をおりて三足ばかり往ったが、ふと涙に濡れている顔を此方へ見せた。
「これでいよいよお別れいたします、どうかお大事に」
趙も胸がいっぱいになって言おうと思うことが口に出なかった。
暁の光がうっすらと見えた。と、愛卿の霊は燈の消えるように見えなくなった。室の方を見ると有明の燈の光が消えかかっていた。
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