阿宝
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)粤西《えっせい》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)藜※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《あかざ》の
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 粤西《えっせい》に孫子楚《そんしそ》という名士があった。枝指《むつゆび》のうえに何所《どこ》かにぼんやりしたところがあったから、よく人にかつがれた。その孫は他所《よそ》へ往って歌妓《げいしゃ》でもいると、遠くから見ただけで逃げて帰った。その事情を知ったものがうまくこしらえて伴《つ》れてきて、歌妓をそばへやってなれなれしくでもさすと、頸《くび》まで赧《あか》くして、汗を流してこまった。悪戯者《いたずらもの》どもはそれを面白がっていたが、後には諢名《あだな》をつけて孫痴《そんち》といった。
 村に豪商があってそこの富力は大名とおんなじ位だといわれていた。従って親類も皆身分がよかった。その豪商に阿宝《あほう》という女《むすめ》があって婿になる人を探していた。富豪のうえに女がその地
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