阿繊
蒲松齢
田中貢太郎訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)奚山《けいざん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五|疋《ひき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)騾[#「騾」は底本では「螺」]
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奚山《けいざん》は高密《こうみつ》の人であった。旅に出てあきないをするのが家業で、時どき蒙陰《もういん》県と沂水《ぎすい》県の間を旅行した。ある日その途中で雨にさまたげられて、定宿《じょうやど》へゆきつかないうちに、夜が更《ふ》けてしまった。宿をかしてくれそうな物を売る家の門口をかたっぱしから叩《たた》いてみたが、返事をするものがなかった。しかたなしに廡下《のきした》をうろうろしていると、一軒の家の扉を左右に開けて一人の老人が出て来た。
「お困りのようだな。お入り。」
「有難うございます。」
山は喜んで老人についてゆき、曳《ひ》いている驢《ろば》を繋《つな》いで室《へや》の中へ入った。室の中には几《つくえ》も腰掛けもなかった。老人はいった。
「わしは、あんたがお困りのようだから、お泊めはしたが、わしの家は食
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