な。

何がなしに
肺が小さくなれる如《ごと》く思ひて起きぬ――
 秋近き朝。

秋近し!
 電燈の球《たま》のぬくもりの
 さはれば指の皮膚《ひふ》に親しき。

ひる寝せし児の枕辺《まくらべ》に
人形を買ひ来てかざり、
 ひとり楽しむ。

クリストを人なりといへば、
 妹の眼がかなしくも、
 われをあはれむ。

縁先《えんさき》にまくら出させて、
 ひさしぶりに、
 ゆふべの空にしたしめるかな。

庭のそとを白き犬ゆけり。
 ふりむきて、
 犬を飼はむと妻にはかれる。



底本:「日本文学全集12 国木田独歩・石川啄木集」集英社
   1967(昭和42)年9月7日初版発行
   1972(昭和47)年9月10日9版発行
入力:j.utiyama
校正:浜野智
1998年8月3日公開
2001年12月8日修正
青空文庫作成ファイル:
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