「毛」に代えて「公の右上の欠けたもの」、第4水準2−94−57]処からまあ、よくねえ。』と言つて、『お定や、お定や。』
お定は、怎やら奥様に済まぬ様な気がするので、怖る/\行つて坐ると、お前も聞いた様な事情だから、まだ一昼夜にも成らぬのにお前も本意ないだらうけれども、この内儀さんと一緒に帰つたが可からうと言ふ奥様の話で、お定は唯顔を赤くして堅くなつて聞いてゐたが、軈てお吉に促されて、言葉|寡《すくな》に礼を述べて其家を出た。
戸外へ出ると、お定は直ぐ、
『甚※[#「麾」の「毛」に代えて「公の右上の欠けたもの」、第4水準2−94−57]《どんな》人だべ、お内儀さん?』と訊いた。
『いけ好かない奥様だね。』と言つたが、『迎への人かえ? 何とか言つたつけ、それ、忠吉さんとか忠次郎さんとかいふ、禿頭の腹の大《でつ》かい人だよ。』
『忠太ツて言ふべす、そだら。』
『然う/\、其忠太さんさ。面白い語《ことば》な人だねえ。』と言つたが、『来なくても可いのに、お前さん達許り詰らないやね、態々出て来て直ぐ伴れて帰られるなんか。』
『真《ほん》に然うでごあんす。』と、お定は口を噤《つぐ》んで了つた。
前へ
次へ
全82ページ中75ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング