また直ぐ笑ひを含んで、『※[#「口+云」、第3水準1−14−87]、好《よ》し/\、此老爺さんが引受けたら間違ツこはねえが、何だな、お定さんも謀叛《むほん》の一味に加つたな?』
『謀叛《むほん》だど、まあ!』とお定は目を大きくした。
『だがねお八重さん、お定さんもだ、まあ熟《よつ》く考へてみる事《こつ》たね。俺は奈何でも構はねえが、彼方へ行つてから後悔《あとくやみ》でもする樣ぢや、貴女方《あんたがた》自分の事《こつ》たからね。汽車の中で乳飮みたくなつたと言つて、泣出されでもしちや、大變な事になるから喃《なあ》。』
『誰《だれ》ア其※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《そんな》に……。』とお八重は肩を聳かした。
『まあさ。然《さ》う直ぐ怒《おこ》らねえでも可いさ。』
と源助さんはまたしても笑つて、『一度東京へ行きや、もう恁※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《こんな》所にや一生歸つて來る氣になりませんぜ。』
 お八重は「歸つて來なくつても可い。」と思つた。お定は「歸つて來られぬ事があるものか。」と思つた。
 程なく四
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