惠子さん? 風邪《かぜ》でもお引きなすつて?』
『否、今日は何とも無いんですけれど、昨晩丁度お腹が少し變だつた所でしたから……折角お使を下すつたのに、濟みませんでしたわねえ。』
『心配しましたわ、私。』と、靜子は眞面目に言つた。『貴女が被來《いらつしや》らないもんだから、詰らなかつたの歌留多は。』
『あら其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》事は有りませんわ。大勢|被行《いらし》つたでせう、神山さんも?』
『けれどもねえ智惠子さん、怎《ど》うしたんだか些とも氣が逸《はず》まなかつてよ。騷いだのは富江さん許り……可厭《いやあ》ねあの人は!』
『……那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》人だと思つてれヤ可いわ。』
靜子は、その富江が山内の艶書を昌作に呉れた事を話さうかと思つたが、何故か二人の間が打解けてゐない樣な氣がして、止めて了つた。三十分許り經つて暇乞をした。
二人は相談した樣に、吉野のことは露程も口に出さなかつた。
靜子が家へ歸ると、信吾は待ち構へてゐたといふ風に自分の室へ呼
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