(十三)の二
二人は暫時《しばし》言葉が無かつた。
静子はそれを、屹度兄の信吾の事とは察した。が、兄の事を思ふだけに、何と訊いて可《い》いか解らなかつた。
稍あつてから、
『え? 何の事私が誤解してるツて?』と静子が再《また》言ふ。
『言はずに置くわ、私。』と、思切り悪く言つて、清子は漸々《やうやう》首を上げる。
『アラ怎《ど》うして?』
『兄の事……ぢやなくつて?』
清子は羞し気に俯向いた。
『清子さん、私何も、貴女の事悪くなんか思つてゐやしなくつてよ。』
『アラ然うぢやなくつてよ。それは私だつて能く知つててよ。』
二人は懐し気に目を見合せた。
『私此の家に嫁《き》た事、貴女|可怪《をかし》いと思つたでせう?』と、稍あつて清子は極悪相《きまりわるさう》に言つた。
『でもないわ……今になつては。』と、静子は心苦し気である。静子は、アノ事あつて以来兄信吾の心が解りかねた。そして、その兄の不徳を、今又一つ聞ねばならぬといふ気がすると、流石に兄妹《きやうだい》であれば辛くない訳に行かぬ。が、又、目の前の清子を見ると、この世に唯一人の自分の友が此人だと言ふ許《ばか》りなき慕
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