人だ。」さう思ひながら暫らく荷物を下して息を繼いだ。
「青山内科看護婦室」といふ札のある入口へ行つてコツ/\扉《ドア》を叩くと、草履の音と共に一人の女が現れた。女は何囘も水を潜つたやうな縞の雜使婦服を着て、背が低かつた。予は默つて受付から貰つて來た一枚の紙片を渡した。「あ、さうですか。」女はさう言つた。さうして直ぐまた中へ入つて行つた。
予はその時首を囘らして予の立つてゐる廊下の後先を眺めた。(明治四十四年二月稿)
底本:「啄木全集 第十卷」岩波書店
1961(昭和36)年8月10日新装第1刷発行
入力:蒋龍
校正:小林繁雄
2009年9月10日作成
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