ッじように、豊国はそんな註文なぞ忘れたかのように、ながく打捨ておきました。
 やっと三年目になって、姿絵は出来上りました。使に立った札差の小僧は、豊国の手から、主人の姿絵を受取って、それに眼を落しました。
「これはよくにていますな。うちの御隠居さんそっくりですよ。」
と思わず叫びながら、つくづく見とれていましたが、暫くするとその眼からはらはらと涙がこぼれかかろうとしました。すぐ前で煙草をふかしていた豊国は、それを見遁しませんでした。
「おい、おい。小僧さん。何だって涙なぞこぼすのだ。御隠居のお小言でも思い出したのかい。それならそれでいいが、絵面を濡らすことだけは堪忍してくんな。」
「いいえ、違います。」小僧は慌てて手の甲で、涙を受取りました。「私にも国もとにこの御隠居様と同じ年恰好のお祖父様《じいさま》があります。小さい時から大層私を可愛がってくれましたので、江戸へ奉公に出て来ても、一日だって忘れたことはありません。今これを見るにつけて、私のお祖父様をもこんな風に描いていただきましたら、どんなにか嬉しかろうと存じまして。」
「ふうん。そんな訳だったのか。お前、祖父さん思いだな。」豊国は
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