烽フ音を聞いた主人の丿観は、わざと慌てふためいて外へ飛び出して来た。坑のなかには利休が馬鈴薯のように土だらけになって、尻餅をついていた。
「これは、これは。宗匠でいらっしゃいましたか。とんだ粗相をいたして、まことに相済みません。」
「丿観どの。老人《としより》はとかく脚もとが危うてな……」
客としての心得は、主人の志を無駄にしないことだと思っていた利休も、案外その志と坑とが両つともあまりに深く、落込んだままどうすることも出来ないで、困りきっていた場合なので、丿観が上から出した手に縋って、やっとこなと起き上って坑の外へ這い出して来た。二人は顔を見合せて、からからと声をあげて笑った。
客は早速湯殿に案内せられた。湯槽には新しい湯が溢れるばかりに沸いていた。茶の湯の大宗匠はそのなかに浸り、のんびりした気持になって頭のてっぺんや、頸窩《ぼんのくぼ》にへばりついた土を洗い落した。
浴みが済むと、新しい卸し立ての衣裳が客を待っていた。利休は勧めらるるがままにそれを着けて、茶席に入った。
「すっかり生れかわったような気持だて。」
利休は全くいい気持だった。こんな気持を味うことが出来るのも、自
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