[鷯《みそさざい》が、人一倍巣を作ることの上手な世話女房であるのを見たのも、この山のなかであった。フランチェスコは森の静寂のなかで、レオナルドの鉄のような心臓の鼓動を聞きながら、時々同伴者の頭の縮れっ毛や、長い髯が日に輝いているのを盗み見て、神様ではなかろうかと思ったということだが、私も偶に自分の背後や横側で、黒い大きなものが、自分と同じような身振で物に見とれ聞きとれているのを見て、思わずびっくりしたことがあった。それは山の傾斜に落ちている私の影だった。
私はそんなことにも倦むと、山のいただきにある大きな岩の背に寝転んだ。そして自分の上に拡がっている大きな藍色の空をじっと見入った。空にはよく鳶の二、三羽が大幅な輪を描いて舞っていた。私のとりとめない空想は、その鳶の焦茶色に光った翼に載せられて空高く飛んだものだが、どうかすると鳥の描く輪は、次第々々に横に逸れて、いつのまにか私の視野から遠ざかってしまうことがないでもない。振り落された私の空想は、あぶなくもんどりうってまた私のふところに帰って来た。
私はまた海にもよく往った。多くの場合水島灘の浪は女のように静かだった。私は岸の柔かい砂の
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