キ僧になっていた織田有楽斎が呼びとめた。
「もし、もし。瓜売どの。老年の修行者に瓜をお施し下され。」
 秀吉が自分の荷のなかから、瓜を二つ取出して、その手に載せてやると、有楽斎はそれを見てちょっと眉をしかめた。
「折角じゃが、これは熟れていぬようじゃ。もっと甘そうなのを……。」
と押が強く所望するおかしさに、居合す人達は皆笑いくずれたということだ。闊達な秀吉の気質と真桑瓜の持味とは、うまく調和しそうに思われる。
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   秋が来た

 また秋がやって来た。

 空を見よ。澄みきった桔梗色の美しさ。一雨さっと降り上った後の初夏の青磁色の空の新鮮さもさることながら、大空そのものの底の知られない深さと透明さとは、この頃ならでは仰ぎ見るべくもない。私は建詰った市街の屋根と屋根との間から、ふと紫色の空を見つけて、
「おう、秋だ。」
と思わずそこに立停ったことがよくある。何という清澄さであろう。すぐれた哲人の観心の生涯を他にしては、この世でまたと見られない味である。桔梗色に澄み切ったままでもよいが、ときおり白雲の一つ二つが、掠めたように静かに行き過ぎるのも悪くはない。哲人が観心の生涯
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