ツかり、かちんと音を立てて、跳ねかえりざま、どこかに姿をかくしてしまう。――どちらにしても、親木の立っている場所から八尺とは離れていない。彼らはそれを少しも悔まない。彼らにとって、ともかくもそこはまだ見ぬ国なのである。焦茶色の外皮の堅さは、こんな場合にもかすり傷一つ負わさない。
 私はこんなことを思いながら、栗の実の二つ三つを噛んで、それを火鉢の灰に埋めた。灰のなかからぷすぷすと煙がいぶり出して来た。
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   老樹

     1

 南メキシコの片田舎に、世界で一番古いだろうと言われる老木が立っている。それはすばらしく大きな糸杉《サイプレス》で、幹の周囲が百二十六|呎《フィート》、樹齢はごく内輪に見積っても、まず六千年は請合だと言われている。
 私の住んでいる西宮をあまり離れていない六甲村に、今度天然記念物となった大きな樟樹がある。幹の周囲三十八尺六寸、根もとの周囲六十四尺にあまるすばらしいもので、樹齢はざっと千三百年にはなるだろうということだ。その附近に住んでいる、今年七十二才の前田某という老人の言葉によると、今から六十年ほど前、老人が十二、三才の頃には、この木の幹
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