驍ノはあります。が、どれもこれもあまり効力《ききめ》といってはないようです……。」
 又四郎は赤ちゃけた松の葉を見上げながら冷やかに答えた。
「あまり効力がない。それは困ったものだな。」
 和尚はさも当惑したように円い頭をふった。頭の上では松の樹が勢のない溜息をついて、同じように枝をふったらしかった。又四郎は言った。
「そんな薬よりも、ずっと効力が見えるものが一つあります。もっともこれは私の秘伝でございますが……。」
「そうか。秘伝と聞けば、なお更それを聞きたいものだて。」
「それは、和尚さま、お経にある文句なのです。」
 又四郎は口もとに軽い微笑を浮べて言った。
「お経の文句。それはどのお経にある。」
 和尚の眼はものずきに燃えていた。
「観音経のなかの、
[#ここから2字下げ]
※[#「澎」の「彡」に代えて「寸」、第3水準1−87−17]甘露法雨
滅除煩悩焔
[#ここで字下げ終わり]
という文句です。あの文句を紙に書いて、そっと樹の根に埋めておきますと、霊験はあらたかなものです。枯れかけた樹の色が、急に青々と若返って来ます。」
 又四郎は枯れかけた当の松の樹にも、立ち聞きせられるの
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