c。」
「不思議な力。」私はいぶかしそうにG氏の顔を見た。
「まったく不思議なんだ。それはこう言う訳なんだがね。」
G氏は落ついた句調で、ぽつりぽつりと次のようなことを話した。
2
岡山を西へ一里半ばかり離れた田舎に、かなり広い梨畑をもった農夫があった。どうしたものか、いつの年も咲き盛った花の割合に、実のとまりが極く少く、とまった果実もそれが熟れる頃になると、妙に虫がついて、収穫として畑よりあがるものは、ほんの僅かしかなかった。年毎の損つづきに気を腐らした農夫は、いっそ梨畑を掘り返して、そのあとに何か新しいものを植えつけてみたらと思った。で、いつもこんな場合に、いい分別を貸してもらうことになっている神道――教会の教師を訪ねて、その相談をもちかけた。いうまでもなく、農夫はその教会のふるい信徒の一人だった。
農夫の口から委細を聞いた教師は、気むつかしく首をふった。
「梨畑を掘り返すにはまだ早い。もっと御祈念を積みなさい。」
「御祈念はいたしとります。」
農夫の言葉つきには、どこかに不足らしいところがあった。
「何と言って御祈念している……。」
「神様。どうぞ私の梨畑を
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