の日光とをかはるがはる味ふために、茎は柱のやうに真つ直に突つ立ちながら、花はみな横向きにくつついてゐるのはこの草です。
私は立葵を描いた光琳と乾山との作を見たことがありますが、兄弟相談して画いたかとも思はれる程互によく似てゐました。茎と花とが持つてゐる図案的のおもしろみはどちらにもよく出てゐましたが、土から真つ直に天に向つて突立つてゐるこの草の力強さと厚ぼつたさとは、乾山の方によく出てゐたやうに思ひます。作者の人柄が映つてゐたのかも知れません。
暫くするうち、雨は小降りとなり、やがて夕日が少しづゝ洩れるやうになりました。湿気を帯びた、新鮮な風がさつと吹いて来ると、ぐしよ濡れになつて突つ伏してゐたそこらの木々は、狗が身ぶるひして水を切るやうに、身体ぢうの水気を跳ね飛ばして、勢ひよく起き上りました。ひた泣きに涙を流した後の歓び――さういつたやうな静かな快活さがあたりに流れました。日暮前のこんな時に、しみじみと見とれるのは、合歓の花です。
二
雨の晴れ間を田圃へ出てみると、小川には薄濁りした雨水が、田の畔を浸すまでに満ち溢れてゐました。それを見ると、小供の頃こんな出水のあ
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