白く※[#「てへん+施のつくり」、第3水準1−84−74]《ひ》く筋の、一縷《いちる》の糸となって烟《けむり》に入るは、立ち上《のぼ》る朝日影に蹄《ひづめ》の塵《ちり》を揚げて、けさアーサーが円卓の騎士と共に北の方《かた》へと飛ばせたる本道である。
「うれしきものに罪を思えば、罪長かれと祈る憂《う》き身ぞ。君一人館に残る今日を忍びて、今日のみの縁《えにし》とならばうからまし」と女は安らかぬ心のほどを口元に見せて、珊瑚《さんご》の唇をぴりぴりと動かす。
「今日のみの縁とは? 墓に堰《せ》かるるあの世までも渝《かわ》らじ」と男は黒き瞳《ひとみ》を返して女の顔を眤《じっ》と見る。
「さればこそ」と女は右の手を高く挙《あ》げて広げたる掌《てのひら》を竪《たて》にランスロットに向ける。手頸《てくび》を纏《まと》う黄金《こがね》の腕輪がきらりと輝くときランスロットの瞳はわれ知らず動いた。「さればこそ!」と女は繰り返す。「薔薇の香《か》に酔える病を、病と許せるは我ら二人のみ。このカメロットに集まる騎士は、五本の指を五十度繰り返えすとも数えがたきに、一人として北に行かぬランスロットの病を疑わぬはなし。
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