「おれだって赤シャツと両立するものか。害にならないと思うなんて生意気だ」
「君はあまり単純過ぎるから、置いたって、どうでも胡魔化《ごまか》されると考えてるのさ」
「なお悪いや。誰《だれ》が両立してやるものか」
「それに先だって古賀が去ってから、まだ後任が事故のために到着《とうちゃく》しないだろう。その上に君と僕を同時に追い出しちゃ、生徒の時間に明きが出来て、授業にさし支《つか》えるからな」
「それじゃおれを間《あい》のくさびに一席|伺《うかが》わせる気なんだな。こん畜生《ちくしょう》、だれがその手に乗るものか」

 翌日《あくるひ》おれは学校へ出て校長室へ入って談判を始めた。
「何で私に辞表を出せと云わないんですか」
「へえ?」と狸はあっけに取られている。
「堀田には出せ、私には出さないで好《い》いと云う法がありますか」
「それは学校の方の都合《つごう》で……」
「その都合が間違《まちが》ってまさあ。私が出さなくって済むなら堀田だって、出す必要はないでしょう」
「その辺は説明が出来かねますが――堀田君は去られてもやむをえんのですが、あなたは辞表をお出しになる必要を認めませんから」
 
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