後、山嵐が憤然《ふんぜん》とやって来て、いよいよ時機が来た、おれは例の計画を断行するつもりだと云うから、そうかそれじゃおれもやろうと、即座《そくざ》に一味徒党に加盟した。ところが山嵐が、君はよす方がよかろうと首を傾《かたむ》けた。なぜと聞くと君は校長に呼ばれて辞表を出せと云われたかと尋《たず》ねるから、いや云われない。君は? と聴き返すと、今日校長室で、まことに気の毒だけれども、事情やむをえんから処決《しょけつ》してくれと云われたとの事だ。
「そんな裁判はないぜ。狸は大方|腹鼓《はらつづみ》を叩《たた》き過ぎて、胃の位置が顛倒《てんどう》したんだ。君とおれは、いっしょに、祝勝会へ出てさ、いっしょに高知のぴかぴか踴《おど》りを見てさ、いっしょに喧嘩をとめにはいったんじゃないか。辞表を出せというなら公平に両方へ出せと云うがいい。なんで田舎《いなか》の学校はそう理窟《りくつ》が分らないんだろう。焦慮《じれった》いな」
「それが赤シャツの指金《さしがね》だよ。おれと赤シャツとは今までの行懸《ゆきがか》り上|到底《とうてい》両立しない人間だが、君の方は今の通り置いても害にならないと思ってるんだ」
前へ
次へ
全210ページ中195ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング