だって居るのはいやだ」
「君が辞表を出したって、赤シャツは困らない」
「それもそうだな。どうしたら困るだろう」
「あんな奸物の遣る事は、何でも証拠《しょうこ》の挙がらないように、挙がらないようにと工夫するんだから、反駁《はんばく》するのはむずかしいね」
「厄介《やっかい》だな。それじゃ濡衣《ぬれぎぬ》を着るんだね。面白《おもしろ》くもない。天道是耶非《てんどうぜかひ》かだ」
「まあ、もう二三日様子を見ようじゃないか。それでいよいよとなったら、温泉《ゆ》の町で取って抑《おさ》えるより仕方がないだろう」
「喧嘩事件は、喧嘩事件としてか」
「そうさ。こっちはこっちで向うの急所を抑えるのさ」
「それもよかろう。おれは策略は下手《へた》なんだから、万事よろしく頼む。いざとなれば何でもする」
 俺と山嵐はこれで分《わか》れた。赤シャツが果《はた》たして山嵐の推察通りをやったのなら、実にひどい奴だ。到底《とうてい》智慧比べで勝てる奴ではない。どうしても腕力《わんりょく》でなくっちゃ駄目《だめ》だ。なるほど世界に戦争は絶えない訳だ。個人でも、とどの詰《つま》りは腕力だ。
 あくる日、新聞のくるのを待ち
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