》を据《す》えたつもりでいる。おれは床の中で、糞《くそ》でも喰《く》らえと云《い》いながら、むっくり飛び起きた。不思議な事に今まで身体の関節《ふしぶし》が非常に痛かったのが、飛び起きると同時に忘れたように軽くなった。
おれは新聞を丸めて庭へ抛《な》げつけたが、それでもまだ気に入らなかったから、わざわざ後架《こうか》へ持って行って棄《す》てて来た。新聞なんて無暗《むやみ》な嘘《うそ》を吐《つ》くもんだ。世の中に何が一番|法螺《ほら》を吹《ふ》くと云って、新聞ほどの法螺吹きはあるまい。おれの云ってしかるべき事をみんな向《むこ》うで並《なら》べていやがる。それに近頃東京から赴任した生意気な某とは何だ。天下に某と云う名前の人があるか。考えてみろ。これでもれっきとした姓《せい》もあり名もあるんだ。系図が見たけりゃ、多田満仲《ただのまんじゅう》以来の先祖を一人《ひとり》残らず拝ましてやらあ。――顔を洗ったら、頬《ほっ》ぺたが急に痛くなった。婆さんに鏡をかせと云ったら、けさの新聞をお見たかなもしと聞く。読んで後架へ棄てて来た。欲しけりゃ拾って来いと云ったら、驚《おどろ》いて引き下がった。鏡で顔を見
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