思ったら、後ろからも、背中を棒《ぼう》でどやした奴がある。教師の癖《くせ》に出ている、打《ぶ》て打てと云う声がする。教師は二人だ。大きい奴と、小さい奴だ。石を抛《な》げろ。と云う声もする。おれは、なに生意気な事をぬかすな、田舎者の癖にと、いきなり、傍《そば》に居た師範生の頭を張りつけてやった。石がまたひゅうと来る。今度はおれの五|分刈《ぶがり》の頭を掠《かす》めて後ろの方へ飛んで行った。山嵐はどうなったか見えない。こうなっちゃ仕方がない。始めは喧嘩をとめにはいったんだが、どやされたり、石をなげられたりして、恐《おそ》れ入って引き下がるうんでれがんがあるものか。おれを誰だと思うんだ。身長《なり》は小さくっても喧嘩の本場で修行を積んだ兄さんだと無茶苦茶に張り飛ばしたり、張り飛ばされたりしていると、やがて巡査だ巡査だ逃げろ逃げろと云う声がした。今まで葛練《くずね》りの中で泳いでるように身動きも出来なかったのが、急に楽になったと思ったら、敵も味方も一度に引上げてしまった。田舎者でも退却《たいきゃく》は巧妙だ。クロパトキンより旨いくらいである。
 山嵐はどうしたかと見ると、紋付《もんつき》の一重
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