心掛けておりますが」などと新夫婦を取り捲《ま》いてしまう。高柳君は憮然《ぶぜん》として中心をはずれて立っている。
すると向うから、襷《たすき》がけの女が駈けて来て、いきなり塩瀬《しおぜ》の五《いつ》つ紋《もん》をつらまえた。
「さあ、いらっしゃい」
「いらっしゃいたって、もうほかで御馳走《ごちそう》になっちまったよ」
「ずるいわ、あなたは、他《ひと》にこれほど馳《か》けずり廻らせて」
「旨《うま》いものも、ない癖に」
「あるわよ、あなた。まあいいからいらっしゃいてえのに」とぐいぐい引っ張る。塩瀬《しおぜ》は羽織が大事だから引かれながら行く、途端《とたん》に高柳君に突き当った。塩瀬はちょっと驚ろいて振り向いたまでは、粗忽《そこつ》をして恐れ入ったと云う面相《めんそう》をしていたが、高柳君の顔から服装を見るや否や、急に表情を変えた。
「やあ、こりゃ」と上からさげすむように云って、しかも立って見ている。
「いらっしゃいよ。いいからいらっしゃいよ。構わないでも、いいからいらっしゃいよ」と女は高柳君を後目《しりめ》にかけたなり塩瀬を引っ張って行く。
高柳君はぽつぽつ歩き出した。若夫婦は遥《は
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