》した議論です。同じ大学の卒業生が同じ程度のものであったら、大学の卒業生はことごとく後世に名を残すか、またはことごとく消えてしまわなくってはならない。自分こそ後世に名を残そうと力《りき》むならば、たとい同じ学校の卒業生にもせよ、ほかのものは残らないのだと云う事を仮定してかからなければなりますまい。すでにその仮定があるなら自分と、ほかの人とは同様の学士であるにもかかわらずすでに大差別があると自認した訳じゃありませんか。大差別があると自任しながら他《ひと》が自分を解してくれんと云って煩悶するのは矛盾です」
「それで先生は後世に名を残すおつもりでやっていらっしゃるんですか」
「わたしのは少し、違います。今の議論はあなたを本位にして立てた議論です。立派な作物を出して後世に伝えたいと云うのが、あなたの御希望のようだから御話しをしたのです」
「先生のが承《うけたまわ》る事が出来るなら、教えて頂けますまいか」
「わたしは名前なんてあてにならないものはどうでもいい。ただ自分の満足を得《う》るために世のために働くのです。結果は悪名になろうと、臭名《しゅうめい》になろうと気狂《きちがい》になろうと仕方がな
前へ
次へ
全222ページ中146ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング