それ以外のもので、文壇の偉い人の書いたものは大抵偉いのです。決して悪いものじゃありません。西洋のものに比べてちっとも驚くに足らぬ。唯|竪《たて》に読むと横に読むだけの違いである。横に読むと大変巧いように見えるというのは誤解であります。自分でそれほどのオリヂナリテーを持っていながら、自分のオリヂナリテーを知らずに、あくまでもどうも西洋は偉い偉いと言わなくても、もう少しインデペンデントになって、西洋をやっつけるまでには行かないまでも、少しはイミテーションをそうしないようにしたい。芸術上ばかりではない。私は文芸に関係が深いからとかく文芸の方から例を引くが、その他においても決して追《お》っ着《つ》かないものはない。金の問題では追っ着かないか知らぬが、頭の問題ではそんなものではないと思っている。あなた方も大学を御遣《おや》りになって、そうして益《ますます》インデペンデントに御遣りになって、新しい方の、本当の新しい人にならなければ不可《いけ》ない。蒸返《むしかえ》しの新しいものではない。そういうものではいけない。
要するにどっちの方が大切であろうかというと、両方が大切である、どっちも大切である。
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