川家が将軍に成《な》った末で余り勢いは強くなかったけれども、とにかく将軍というものが政権を持っておってその上に天子様《てんしさま》がおられるという。これは一般の法則でないという処から、習慣的に続いて来た幕府というものを引っ繰り返したというのは、その引っ繰り返るという時の人の胸中《きょうちゅう》に同情があって、その同情を惹《ひ》き起すという事が出来なければ、あれは成功は出来ないのである。だから徒《いたずら》にインデペンデントということは不可《いけ》ない。人間の自覚というものは一歩先へ先へと来るものである。一歩遅れたら人より一歩遅れて歩行《ある》かなければならない。人は相当の時期が来ればその通りになるべき運命を持っているのだから、一歩先に啓発しなければならぬ。それが強い深い背景といえばいえる。それがなければ成功は出来ない。
成功ということについて歴史などの例を挙げたが、誤解されるといけないからここに手近い例をもう一つ挙げて置きたい。学校騒動があってその学校の校長さんが代る。この学校ではありませんよ。そうすると後に新しい校長さんが来ましょう。そうしてその学校騒動を鎮《しず》めに掛《かか》る
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