云っても、また来客を待ち受ける準備としても、物々しいものであった。津田は席につかない先にまず直感した。
「すべてが改《あらた》まっている。これが今日会う二人の間に横《よこた》わる運命の距離なのだろう」
 突然としてここに気のついた彼は、今この室へ入り込んで来た自分をとっさに悔いようとした。
 しかしこの距離はどこから起ったのだろう? 考えれば起るのが当り前であった。津田はただそれを忘れていただけであった。では、なぜそれを忘れていたのだろう? 考えれば、これも忘れているのが当り前かも知れなかった。
 津田がこんな感想に囚《とら》えられて、控《ひかえ》の間《ま》に立ったまま、室を出るでもなし、席につくでもなし、うっかり眼前の座蒲団を眺めている時に、主人側の清子は始めてその姿を縁側の隅《すみ》から現わした。それまで彼女がそこで何をしていたのか、津田にはいっこう解《げ》せなかった。また何のために彼女がわざわざそこへ出ていたのか、それも彼には通じなかった。あるいは室を片づけてから、彼の来るのを待ち受ける間、欄干の隅に倚《よ》りかかりでもして、山に重《かさ》なる黄葉《こうよう》の色でも眺めていたの
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