に裏の山へ散歩に参りましょうってお約束をしたもんですからね」
「じゃちょっと伺って参りましょう」
「いいえ、もういいのよ。散歩はこの通り済んじまったんだから。ただもしやどこかお加減でも悪いのじゃないかしらと思って、ちょっと番頭さんに訊いてみただけよ」
「多分ただのお休みだろうと思いますが、それとも――」
「それともなんて、そう真面目《まじめ》くさらなくってもいいのよ。ただ訊いてみただけなんだから」
 二人はそれぎり行き過ぎた。津田は歯磨粉で口中《こうちゅう》をいっぱいにしながら、また昨夜《ゆうべ》の風呂場を探《さが》しに廊下へ出た。

        百七十九

 しかし探すなどという大袈裟《おおげさ》な言葉は、今朝の彼にとって全く無用であった。路《みち》に曲折の難はあったにせよ、一足《ひとあし》の無駄も踏まずに、自然|昨夜《ゆうべ》の風呂場へ下りられた時、彼の腹には、夜来の自分を我ながら馬鹿馬鹿しいと思う心がさらに新らしく湧《わ》いて出た。
 風呂場には軒下に篏《は》めた高い硝子戸《ガラスど》を通して、秋の朝日がかんかん差し込んでいた。その硝子戸|越《ごし》に岩だか土堤《どて》だかの
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