の時ひょっと気がつくとするぜ、いいかね。そうしたらその時の君が、やっという掛声《かけごえ》と共に、早変りができるかい。早変りをしてこの僕になれるかい」
「そいつは解らないよ」
「解らなかない、解ってるよ。なれないにきまってるんだ。憚《はばか》りながらここまで来るには相当の修業が要《い》るんだからね。いかに痴鈍《ちどん》な僕といえども、現在の自分に対してはこれで血《ち》の代《しろ》を払ってるんだ」
津田は小林の得意が癪《しゃく》に障《さわ》った。此奴《こいつ》が狗《いぬ》のような毒血を払ってはたして何物を掴《つか》んでいる? こう思った彼はわざと軽蔑《けいべつ》の色を面《おもて》に現わして訊《き》いて見た。
「それじゃ何のためにそんな話を僕にして聴かせるんだ。たとい僕が覚えていたって、いざという場合の役にゃ立たないじゃないか」
「役にゃ立つまいよ。しかし聴かないよりましじゃないか」
「聴かない方がましなくらいだ」
小林は嬉《うれ》しそうに身体《からだ》を椅子《いす》の背に靠《もた》せかけてまた笑い出した。
「そこだ。そう来るところがこっちの思う壺《つぼ》なんだ」
「何をいうんだ」
「
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