いくら自分を書物より軽く見るにしたところで、自分は自分なりに、書物と独立したまんまで、活きて働らいて行かなければならなかった。だから勢い本と自分とは離れ離れになるだけであった。それをもっと適切な言葉で云い現わすと、彼女は折々|柄《がら》にもない議論を主張するような弊に陥《おちい》った。しかし自分が議論のために議論をしているのだからつまらないと気がつくまでには、彼女の反省力から見て、まだ大分《だいぶん》の道程《みちのり》があった。意地の方から行くと、あまりに我《が》が強過ぎた。平たく云えば、その我がつまり自分の本体であるのに、その本体に副《そ》ぐわないような理窟《りくつ》を、わざわざ自分の尊敬する書物の中《うち》から引張り出して来て、そこに書いてある言葉の力で、それを守護するのと同じ事に帰着した。自然|弾丸《たま》を込めて打ち出すべき大砲を、九寸五分《くすんごぶ》の代りに、振り廻して見るような滑稽《こっけい》も時々は出て来なければならなかった。
 問題ははたして或雑誌から始まった。月の発行にかかるその雑誌に発表された諸家の恋愛観を読んだお秀の質問は、実をいうとお延にとってそれほど興味のあ
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