のお金を断ることによって、併《あわ》せて私の親切をも排斥しようとなさるのです。そうしてそれが嫂さんには大変なお得意になるのです。嫂さんも逆です。嫂さんは妹の実意を素直《すなお》に受けるために感じられる好い心持が、今のお得意よりも何層倍人間として愉快だか、まるで御存じない方《かた》なのです」
 お延は黙っていられなくなった。しかしお秀はお延よりなお黙っていられなかった。彼女を遮《さえ》ぎろうとするお延の出鼻を抑《おさ》えつけるような熱した語気で、自分の云いたい事だけ云ってしまわなければ気がすまなかった。

        百十

「嫂さん何かおっしゃる事があるなら、後でゆっくり伺いますから、御迷惑でも我慢して私に云うだけ云わせてしまって下さい。なにもう直《じき》です。そんなに長くかかりゃしません」
 お秀の断り方は妙に落ちついていた。先刻《さっき》津田と衝突した時に比《くら》べると、彼女はまるで反対の傾向を帯びて、激昂《げっこう》から沈静の方へ推《お》し移って来た。それがこの場合いかにも案外な現象として二人の眼に映った。
「兄さん」とお秀が云った。「私はなぜもっと早くこの包んだ物を兄さん
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