別な意味をもたせる便宜もあった。
「どうせ家《うち》へ帰ったって用はないんだろう」
お秀は津田のいう通りにした。話は容易《たやす》く二人の間に復活する事ができた。しかしそれは単に兄妹《きょうだい》らしい話に過ぎなかった。そうして単に兄妹らしい話はこの場合彼らにとってちっとも腹の足《たし》にならなかった。彼らはもっと相手の胸の中へ潜《もぐ》り込《こ》もうとして機会を待った。
「兄さん、あたしここに持っていますよ」
「何を」
「兄さんの入用《いりよう》のものを」
「そうかい」
津田はほとんど取り合わなかった。その冷淡さはまさに彼の自尊心に比例していた。彼は精神的にも形式的にもこの妹に頭を下げたくなかった。しかし金は取りたかった。お秀はまた金はどうでもよかった。しかし兄に頭を下げさせたかった。勢い兄の欲しがる金を餌《えば》にして、自分の目的を達しなければならなかった。結果はどうしても兄を焦《じ》らす事に帰着した。
「あげましょうか」
「ふん」
「お父さんはどうしたって下さりっこありませんよ」
「ことによると、くれないかも知れないね」
「だってお母さんが、あたしの所へちゃんとそう云って来て
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