ようにさせたのだという風な手紙の書方をした。津田が自分の細君に対する虚栄心から、内状をお延に打ち明けなかったのを、お秀はお延自身の虚栄心ででもあるように、頭からきめてかかったのである。そうして自分の誤解をそのまま京都へ伝えてしまったのである。今でも彼女はその誤解から逃《のが》れる事ができなかった。したがってこの事件に関係していうと、彼女の相手は兄の津田よりもむしろ嫂《あによめ》のお延だと云った方が適切かも知れなかった。
「いったい嫂《ねえ》さんはどういうつもりでいらっしゃるんでしょう。こんだの事について」
「お延に何にも関係なんかありゃしないじゃないか。あいつにゃ何にも話しゃしないんだもの」
「そう。じゃ嫂《ねえ》さんが一番気楽でいいわね」
 お秀は皮肉な微笑を見せた。津田の頭には、芝居に行く前の晩、これを質にでも入れようかと云って、ぴかぴかする厚い帯を電灯の光に差し突けたお延の姿が、鮮《あざや》かに見えた。

        九十六

「いったいどうしたらいいんでしょう」
 お秀の言葉は不謹慎な兄を困らせる意味にも取れるし、また自分の当惑を洩《も》らす表現にもなった。彼女には夫の手前
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