れない濃い煙が渦《うず》を巻いて棒の先に起った。渦は青竹の根を隠すと共に、抑えつけられている手紙をも隠した。津田は煙に咽《むせ》ぶ顔をお延から背《そむ》けた。……
お時が午飯《ひるめし》の催促に上《あが》って来るまで、お延はこんな事を考えつづけて作りつけの人形のようにじっと坐り込んでいた。
九十
時間はいつか十二時を過ぎていた。お延はまたお時の給仕で独《ひと》り膳《ぜん》に向った。それは津田の会社へ出た留守に、二人が毎日繰り返す日課にほかならなかった。けれども今日のお延はいつものお延ではなかった。彼女の様子は剛張《こわば》っていた。そのくせ心は纏《まと》まりなく動いていた。先刻《さっき》出かけようとして着換えた着物まで、平生《ふだん》と違ったよそゆきの気持を余分に添える媒介《なかだち》となった。
もし今の自分に触れる問題が、お時の口から洩《も》れなかったなら、お延はついに一言《ひとこと》も云わずに、食事を済ましてしまったかも知れなかった。その食事さえ、実を云うと、まるで気が進まなかったのを、お時に疑ぐられるのが厭《いや》さに、ほんの形式的に片づけようとして、膳
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