ぐ》い去るために、その事実を引《ひ》ッ繰《く》り返さなければならなかった。
八十
強い意志がお延の身体《からだ》全体に充《み》ち渡った。朝になって眼を覚《さ》ました時の彼女には、怯懦《きょうだ》ほど自分に縁の遠いものはなかった。寝起《ねおき》の悪過ぎた前の日の自分を忘れたように、彼女はすぐ飛び起きた。夜具を跳《は》ね退《の》けて、床を離れる途端《とたん》に、彼女は自分で自分の腕の力を感じた。朝寒《あささむ》の刺戟《しげき》と共に、締《し》まった筋肉が一度に彼女を緊縮させた。
彼女は自分の手で雨戸を手繰《たぐ》った。戸外《そと》の模様はいつもよりまだよッぽど早かった。昨日《きのう》に引き換えて、今日は津田のいる時よりもかえって早く起きたという事が、なぜだか彼女には嬉《うれ》しかった。怠《なま》けて寝過した昨日の償《つぐな》い、それも満足の一つであった。
彼女は自分で床を上げて座敷を掃《は》き出した後で鏡台に向った。そうして結《ゆ》ってから四日目になる髪を解《と》いた。油で汚《よご》れた所へ二三度|櫛《くし》を通して、癖がついて自由にならないのを、無理に廂《ひさし
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