ん》の誤解を恐れた。多年の多忙と勉強のために損なわれた健康を回復するために、当分閑地についた昨今の彼には、時間の余裕も充分あった。その時間の空虚なところを、自分の趣味に適《かな》う模細工《モザイック》で毎日|埋《う》めて行く彼は、今まで自分と全く縁故のないものとして、平気で通り過ぎた人や物にだんだん接近して見ようという意志ももっていた。
 これらの原因が困絡《こんがら》がって、叔父は時々藤井の宅《うち》へ自分の方から出かけて行く事があった。排外的に見える藤井は、律義《りちぎ》に叔父の訪問を返そうともしなかったが、そうかと云って彼を厭《いや》がる様子も見せなかった。彼らはむしろ快よく談じた。底《そこ》まで打ち解けた話はできないにしたところで、ただ相互の世界を交換するだけでも、多少の興味にはなった。その世界はまた妙に食い違っていた。一方から見るといかにも迂濶《うかつ》なものが、他方から眺めるといかにも高尚であったり、片側で卑俗と解釈しなければならないものを、向うでは是非とも実際的に考えたがったりするところに、思わざる発見がひょいひょい出て来た。
「つまり批評家って云うんだろうね、ああ云う人
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