否や、すぐその後《あと》へ入る事のできた彼女は、従姉《いとこ》のいなくなったのを、自分にとって大変な好都合《こうつごう》のように喜こんだ。お延はそれを知ってるので、わざと言葉をかけた。
「百合子さん、あたしまたお邪魔に上りましたよ。よくって」
百合子は「よくいらっしゃいました」とも云わなかった。机の角へ右の足を載せて、少し穴の開《あ》きそうになった黒い靴足袋《くつたび》の親指の先を、手で撫《な》でていたが、足を畳の上へおろすと共に答えた。
「好いわ、来ても。追い出されたんでなければ」
「まあひどい事」と云って笑ったお延は、少し間《ま》をおいてから、また彼女を相手にした。
「百合子さん、もしあたしが津田を追い出されたら、少しは可哀相《かわいそう》だと思って下さるでしょう」
「ええ、そりゃ可哀相だと思って上げてもいいわ」
「そんなら、その時はまたこのお部屋へおいて下すって」
「そうね」
百合子は少し考える様子をした。
「いいわ、おいて上げても。お姉さまがお嫁に行った後なら」
「いえ継子さんがお嫁にいらっしゃる前よ」
「前に追い出されるの? そいつは少し――まあ我慢してなるべく追い出され
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